僧帽弁閉鎖不全症③ 動物病院で行う心臓の検査

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前回の記事で、僧帽弁閉鎖不全症の症状についてご紹介しましたが、そこで書いた通り、症状が出てくる前に少しずつ僧帽弁の機能不全が進んできます。今回はどの段階でどのような検査をしていくのかをご紹介いたします。

いぬのきもち

聴診:一番最初に行う必須の検査

聴診は僧帽弁閉鎖不全症の疑いがあるなしに関わらず、動物病院で診察をする際に必ず行う検査です。よほど暴れる子や怒ってしまう子では行えないこともありますが、聴診をせずに診察をすることは基本的にはありません

聴診のメリット

聴診のメリットは数秒で実施ができ、費用と動物のストレスがかからないという点にあります。非常に効率のいい検査ですね。

聴診でわかることは心雑音の有無です。心雑音の有無は僧帽弁閉鎖不全症の診断に最も重要であると言っても過言ではなく、症状が出ていない心不全StageBの診断も可能です。僧帽弁閉鎖不全症で心雑音が聞こえないということはまずありません(僧帽弁閉鎖不全症以外の心不全では心雑音がないこともあります)。

心雑音は雑音の大きさによって6段階で評価されます。結構動態によって多少ばらつきはありますが、基本的には心雑音の大きさ≒僧帽弁閉鎖不全症の重症度と思ってもらってもいいでしょう。

それから、聴診は心臓の音を聞くだけではありません。聴診によって肺音(呼吸の音)を聞くことで、肺水腫の時に出て来る捻髪音を聞くことも可能です。レントゲンを撮ることができないほど状態が悪い場合は、聴診で肺水腫の有無を判断することもあります。

聴診のデメリット

聴診は基本的には主観的な評価方法ですので、診察のたびに担当が変わる場合には、聴く人によって多少のずれが出てきてしまいます(それほど大きな違いにはなりません)。

また、雑音の大きさは血液の逆流の程度は評価できますが、僧帽弁閉鎖不全で最も注意が必要な左房圧の増加や左房拡大などの評価はできません。聴診は僧帽弁閉鎖不全症を含む心不全の診断や全身状態の把握のためには必須の検査ですが、聴診だけで治療法を決めることはできません。治療法の決定には、次に紹介する画像検査が必須になります。

レントゲン検査:心臓の形や大きさ・肺野の客観評価

聴診の次によくやる検査はレントゲン検査です。

レントゲン検査のメリット

レントゲン検査の最大のメリットは心臓の客観的な評価ができるということと、肺や気管の評価ができるという点です。

レントゲン検査では、心臓のシルエットが白く映るため、心臓の形や大きさが明らかにわかり、大きさに関しては長さを計測すれば客観的な評価が可能です。また、次に出て来るエコー検査では評価が難しい肺野の評価ができます。

レントゲン検査では心臓の大きさや形を評価することで、心拡大の有無・左房拡大の有無・静脈の拡張の有無(うっ血の指標になります)を調べることができます。また、緊急性の判断や薬の選択に重要な肺水腫の有無や程度の評価も行うことができます。

レントゲン検査のデメリット

レントゲン検査のデメリットは、数秒間動かないように保定をしなければならないということです。重度の肺水腫を起こしている犬では、それをしただけで一気に肺水腫が悪化してしまうことがあるため、レントゲン検査を行えないことがあります。

また、レントゲン検査はあくまで心臓のシルエットを見るだけです。心臓の内部の構造(心臓の壁の厚さや部屋の大きさ弁の形など)や動き(弁の動きや心臓の収縮力、逆流の程度など)を評価することはできません。

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エコー検査:動きや構造など心臓の状態を知るための検査

心臓の検査でもう一つ重要なのが心エコー検査です。

心エコー検査のメリット

心エコー検査はレントゲンでわからない心臓の内部構造や大きさ、機能などがわかる点です。心臓の薬を始める指標の一つである「左房拡大の有無」は、レントゲン検査でもわかることは多いですが、心エコー検査の方がより正確に早い段階で診断可能です。レントゲン検査と比べると、心エコー検査から得られる心臓の情報量は多く、治療薬の選択や効果判定もより精度の高いものを行うことができます。

心エコー検査のデメリット

心エコー検査のデメリットは、評価の難しさにあります。心エコー検査の検査結果は術者の技術やエコーの機械の性能によってかなりばらつきが出ます。古いエコーの機械では心臓を見るのはかなり厳しいです。

また、心エコー検査の精査のためには、横向きの状態で数分、場合によっては10分以上抑えておく必要があります。簡易検査であれば立位でも可能ですが、精査の場合は比較的ストレスの大きな検査になります。

それから、エコー検査では基本的に肺野の評価は難しくなります。肺水腫の程度を見るためにはレントゲン検査が必要になります。

心電図検査

心臓といえば心電図検査を思い浮かべる人も多いと思いますが、実際に僧帽弁閉鎖不全症の診断や治療の際には心電図検査の優先順位は低いです。もちろん意味がない検査ではありませんが、心電図検査は他の検査に比べると、僧帽弁閉鎖不全症に限って言えば必要性は少し落ちるため、省略されることも多いです。

血液検査:薬の効果などの経過を見るために最も適した検査

心不全の診断・治療において、日本では、血液検査はあまり一般的ではありませんでしたが最近は少しずつ増えてきています。アメリカなどではレントゲン検査よりも血液検査を良く行うと聞いたことがあります(アメリカではレントゲン検査の費用が非常に高いからだそうです。日本の動物病院のレントゲン検査代は良心的です)。

今最もよく使われる血液検査は「ANP」と呼ばれるもので、左房拡大の指標として信頼性の高い検査となっています。

血液検査のメリット

血液検査のメリットは、採血のみでできるという手軽さと、誰が検査をしても同じ数値で出て来るという客観性の高さです。採血は基本的にはレントゲンやエコー検査に比べて犬のストレスは低い検査になります。また、左房拡大は薬の種類の選択や効果の判定に非常に重要であり、経過を見ていくために定期的に測定するという使い方には最も適した検査です。

血液検査のデメリット

他の検査と違い、外部の検査センターに血液を送って調べてもらう検査であるため、結果が返ってくるまで数日かかります。そのため、緊急的に治療方法を決めなければならない場合には使えません

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次回は、「僧帽弁閉鎖不全症の犬と暮らすために飼い主が気を付けるべきこと」について記事にしようと思います。

僧帽弁閉鎖不全症について詳しく知りたい方はこちら

心臓の働きの一番わかりやすい説明はこちら

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