猫の風邪「FVR」③ FVRの診断

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猫の最も一般的な感染症「猫伝染性鼻気管炎(FVR)」。伝染力が高く、「猫風邪」と呼ばれる通り、くしゃみや鼻水の症状を出すことをお話してきました。

FVRの第3回目はFVRの診断についてです。

FVR 診断

身体検査のみでの診断が一般的

FVRの診断は、基本的には問診や視診、触診など身体検査のみで行うことが一般的です。

問診

問診では、

  • 外に出るか?(野良猫との接触の可能性の有無)
  • 同居猫はいるか?いるならその子には何か症状がないか
  • 今の症状は?(くしゃみ・鼻水・目やになど)

などの確認を行います。

また、元気や食欲の有無なども確認し、他の病気の可能性がないのか、血液検査などの検査が必要か、積極的な治療が必要かなどを判断していきます。

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視診

視診では、鼻水や目やに、結膜の充血や浮腫などの有無をチェックします。また、呼吸状態を見て、鼻つまりがあるのか、鼻以外の気管や肺などに異常の可能性がないのかをチェックします。

FVRでは鼻つまりを起こす猫が少なくなく、その場合特に子猫では時々口を開けて呼吸をすることがあります。たまに口を開けて呼吸をしても、呼吸数や呼吸の深さ、呼吸様式が正常であれば気管や肺に異常がある可能性は低いと判断します。ただし、

  • 異常に呼吸が速い
  • 異常に呼吸が深い
  • お花や胸を大きく動かして呼吸している
  • 息を吸う長さ(吸気時間)と吐く長さ(呼気時間)に大きな差がある

といった場合には、FVR以外に肺炎や気管支炎、胸水や肺水腫など命の危険を伴う病気があったり、FVRに併発している可能性があります。それらの症状がある場合は、レントゲン検査や超音波検査でそれらがないかどうかを確かめることも多いです。

聴診

聴診はFVRの診断というよりは、それ以外の異常がないかどうかの確認のために行うことがあります。FVRと同じような症状を出していても、心臓や肺、気管支などに異常があると、聴診で心音や肺音に異常が出て来ることがあります。

FVRの確定診断:遺伝子検査とは

FVRの確定診断のために遺伝子診断を行うこともあります。この検査について少しお話いたします。

分泌液からウイルスの遺伝子を検出する

FVRの遺伝子診断にはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)と言われる遺伝子検査を行います。PCRは、そのウイルスに特徴的な遺伝子の一部(塩基配列)を増幅させることで、そのウイルスを検出する方法です。

ウイルスは非常に小さく、通常の顕微鏡では観察できません。そこで、ウイルスに特徴的な遺伝子の一部を増やし、それを発色させることでウイルスがいるかどうかを観察します。つまり、ウイルスがいればその遺伝子が増えて光るという検査です。

猫の結膜やのどの分泌物を培養し、PCRを行ってFVRの病原体である猫ヘルペスウイルスを検出するのがFVRの診断です。

FVRと他の感染症の鑑別が可能

遺伝子診断のメリットは、FVRと同じような症状を出す他の感染症も検出できることです。

「IDEXX」という動物の検査専門の機関が行うFVRの遺伝子検査は、「Real PCRTM 猫上部呼吸器疾患/猫結膜炎パネル」という検査であり、この検査ではFVRを起こすヘルペスウイルスだけでなく、以下の5種類の病原体を検出することができます。

  • 猫カリシウイルス
  • クラミジア
  • マイコプラズマ
  • ボルデテラ
  • H1N1 インフルエンザウイルス

これらの病原体による感染症はすべて猫の上部呼吸器に異常をもたらすため、FVRと同じような症状を起こします。治療方法が変わってきますので、検査で鑑別することのメリットは大きいです。

詳しくはこちらのサイトも参考にしてください。

http://www.idexx.co.jp/pdf/ja_jp/smallanimal/reference-laboratories/jp-realpcr/JP-SAH-lab-dx-realpcr-furd.pdf

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FVRの遺伝子検査のデメリット

FVRの遺伝子検査を行うメリットは大きいですが、多少のデメリットもあります。

費用が高い

FVRの遺伝子検査は、通常1万円を超える高額の検査です。通常麻酔などが必要な検査ではないため猫の負担はほとんどありませんが、飼い主さんの費用負担が大きくなります。

100%の検査ではない

FVRにかかっていても、ウイルスの排泄が少ない場合には、偽陰性(感染していても検査結果が陰性)になってしまうことがあります。

FVR以外の病気を除外するための検査

FVRと同じような症状を出していても、FVR以外の病気が原因になっていたり、FVRに他の病気が併発している可能性があります。そこで、FVRの診断のためには他の病気の除外診断も大切になってきます。

レントゲン検査

レントゲン検査では、主に胸の中に異常がないかどうかを見ていきます。肺炎や気管支炎などの炎症や胸水や肺水腫などの状態では呼吸が荒くなってFVRと同じような症状を起こすことがあります。

レントゲン検査もそれで100%上記の病気を除外できるわけではありませんが、病状の把握のためには必要な検査になってきます。

血液検査

血液検査は、白血球の上昇など炎症の重症度の把握以外に、全身状態の把握という意味でも行われます。

また、猫エイズウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)などFVRの病態を複雑にするような感染症も血液検査で調べることができます。

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治りが悪いならしっかり検査を

FVRはいわゆる猫風邪と呼ばれていることもあり、飼い主さんだけでなく獣医師も時に楽観的にとらえてしまう病気です。そのため、「FVRっぽいから対症療法で様子を見よう」という治療をすることも多いです。

検査を色々することがいいということではなく、対症療法で治ってしまうのであればそれでも問題はないですが、なかなか治りが悪い場合には遺伝子検査などしっかりした検査をしてもらうことをおすすめします。次回はFVRの治療についてお話いたします。

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