犬のフィラリア症⑤ フィラリア陽性犬への最新ボルバキア治療

スポンサーリンク

前回までの記事でフィラリアの症状や治療に関してお話ししましたが、フィラリアが感染し、成虫になってしまった場合は、フィラリアの寿命を待つことが一般的であるということを書いてきました。しかし、最近ではフィラリア成虫の寿命を積極的に短くしたり、心不全を起こしにくくするような治療が始まってきています。今回はその治療の概要をお話いたします。

スポンサーリンク

キーワードは「ボルバキア」

その治療を知る前に、まずは「ボルバキア」を知っておく必要があります。ボルバキアは昆虫やダニ、テントウムシ、蝶、ハエ、蚊、フィラリアなどの線虫などに寄生する細菌です。この細菌の特徴は、自分が感染した宿主を自分の都合のいいように変化させる「利己的細菌」であるという点です。

例えば、ボルバキアは昆虫などの卵子の中でしか増えることができませんが、ダンゴムシやキチョウのオスに感染すると、そのオスを自分が増えることのできるメスに変えてしまうことがわかっています。自分の都合のいいように宿主を変えてしまうなんて怖いですね。以前にニュースになった、脅迫と洗脳で一家の殺し合いをさせた尼崎事件を連想したのは私だけでしょうか。ただし、ボルバキアは現在のところ哺乳類に直接害を及ぼすということは報告されていないため、ボルバキア自体を恐れることはありません。

ボルバキアはフィラリアに寄生して、フィラリアの寿命を延ばす

さて、そのボルバキアですが、フィラリアにも感染していることがわかっています。そして、ボルバキアをフィラリアから除去すると、フィラリアのアポトーシス(いわゆる自殺)が起こることがわかってきました。つまり、フィラリアはボルバキアによって生かされている可能性があるのです。

そこで、フィラリアを直接殺すことなく、ボルバキアを殺すことでフィラリアを死に追いやろうという治療が提唱されているのです。フィラリア駆虫薬との違いは、ボルバキア治療ではフィラリアを同時にたくさん殺すことがないため、一気に死んだ虫体が血管に詰まることがないという安全性にあります。

ボルバキアの治療にはドキシサイクリン

ボルバキアに対して最もよく使われるのは「ドキシサイクリン」と言われる抗生剤です。この抗生剤を数週間連続で投与することでボルバキアを消失できると報告されており、同時にフィラリア予防薬を投与することで1年以内に犬の体からフィラリアが消えるという報告も上がってきています。ボルバキアは炎症反応を引き起こして、フィラリアによる心不全の進行を早める可能性も示唆されていますので、フィラリアの寿命を短くさせるだけでなく、フィラリアによる心不全の予防のためにもボルバキアを治療することは大切です。

現在、まだ完全に確立した治療ではありませんが、こうした治療によって、たとえフィラリアに感染してしまっていても、心不全のリスクを減らすことは可能です。ただし、フィラリアは予防薬で100%防げる病気です。予防が最も大切なのは言うまでもありません。

ボルバキアやジカ熱やデング熱の予防に使える可能性

ボルバキアはフィラリア症の犬にとっては厄介な細菌ですが、実は人にとっては有益な働きをする可能性があるのです。それが昨年流行ったジカ熱やデング熱の予防です。

おそらく、オリンピックが行われたリオデジャネイロで、特殊な蚊を放ってウイルスを予防しようという試みが行われたというニュースを見た人はいると思います。その蚊というのが、ボルバキアに感染した蚊なのです。ボルバキアはジカ熱やデング熱などを起こすウイルスの増殖を抑えることが分かったため、ボルバキア感染蚊を増やしてウイルスを撲滅しようという作戦が行われたのです。そろそろその結果が出て来ると思われますが、まだはっきりした結果の報告は上がってきていないようです。

今後、日本でのフィラリア予防やボルバキア治療が重要になってくる可能性

温暖化により、熱帯性の病気が日本にも増えて来ることが予想されます。そんな中ボルバキアを感染させた蚊を日本でも使うようになるかもしれません。その場合、人間の感染症を防ぐことができる一方、ボルバキアに感染したフィラリアが増えて、フィラリアによる心不全の犬が増える可能性もあります。それでも予防は効果があるので、まずはしっかりとした予防が必要でしょう。また、感染してしまった場合には、ボルバキア治療がより重要になってくるかもしれません。

スポンサーリンク

ボルバキア治療はフィラリア感染犬への光

近年、大変ありがたいことに保護犬活動をされている人も多くなっていますが、おそらくフィラリアに感染してしまっている犬の対策に苦労することも多いのではないかと思います。フィラリア陽性犬でも心不全を起こすことなくフィラリアの完治ができる可能性が、ドキシサイクリンによるボルバキア治療にはあります。まだ、確立された治療ではないので、やっていない病院も少なくはありませんが、フィラリアにかかっていても諦めずにお近くの動物病院へ問い合わせてみましょう。

にほんブログ村 犬ブログへ ポチっとm(__)m