腎不全シリーズ① 犬と猫の腎臓の働きとBUN、Cre、尿比重の意味

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猫の慢性腎不全治療薬の新薬「ラプロス」に非常に注目が集まっているようです(ラプロスに関しては、こちらの記事を参考にしてください)。それだけ、腎不全に悩む飼い主さん、腎不全のより良い治療法を望む獣医師がいるという証拠ではないかと思います。現在のところ「猫の慢性腎不全治療薬」での承認ではありますが、犬へも応用できる可能性は高いと思うので、犬の飼い主さんも知っておいた方がいいでしょう。今回は、腎臓病(腎不全)を知る上で知っておきたい腎臓の働きを少し詳しくお話ししておこうと思います。BUN、Cre(クレアチニン)などの腎臓の数値がどういった意味をもつのか、尿比重がどうして重要なのかも解説していきます。


いぬのきもちねこのきもち

腎臓で尿が作られる流れ~動脈→糸球体→ボウマン嚢→尿細管→尿管→膀胱

尿は腎臓で作られますが、腎臓は複雑なメカニズムで血液から必要のない老廃物を尿として排泄し、必要な成分を血液に戻すという働きをしています。

腎臓で尿を作る過程で重要なのは、糸球体と尿細管であり、それぞれ別の働きをしながら尿が作られます。尿は2段階で作られるということを頭に入れておきましょう。

尿の産生過程① 糸球体でのろ過=原尿の作成

腎臓へ入り込む腎動脈からいくつも分かれて細くなった動脈は、非常に細い血管が絡み合ってボールのようになった「糸球体」を作ります。糸球体の大きさは直径0.1㎜~0.2㎜と非常に小さいもので、1つの腎臓に猫では20万個、犬では40万個あると言われています。

糸球体の機能は「フィルター」機能です。つまり、腎動脈から流れて来た血液をろ過して、不必要な老廃物を尿へと排泄する役割があります。糸球体の血管は他の血管に比べて細かい穴がたくさん開いています。そのため、その穴を通れる大きさの物質はろ過されて、その受け皿のような働きをする「ボウマン嚢」へ流れていきます。糸球体のろ過は大きさだけではなく、電荷にもよります。糸球体の血管はマイナスの電荷をもっているため、同じくマイナスの電荷をもっている血球やアルブミンなどは反発してろ過されにくいという性質もあります。

糸球体からろ過されて、ボウマン嚢へ排泄された尿は原尿といわれますが、その中には体に必要な成分もたくさん含まれており、次の尿細管で尿が精製されていきます。

尿の産生過程② 尿細管での再吸収と分泌

ボウマン嚢にたまった原尿は、尿細管と言われる細い管の中を通って尿管から膀胱へ出ていきます。この尿細管も尿を完成させるために重要な役割をしています。尿細管では、「再吸収」と「分泌」が行われます。

再吸収されるものは、糸球体でろ過されてしまった体に必要なものです。水、グルコース、アミノ酸、ビタミン、各種ミネラルなどはここで尿細管で再吸収されて再び全身に戻ります。一方で、薬や老廃物などは尿細管から分泌され、尿中に排泄されます。

コーヒーやお茶を飲むとおしっこが多くなりますが、これは尿細管での再吸収が減るためです。尿細管で再吸収が全く行われないと、ヒトでは1日150リットルの尿が作られると言われています。一般的なお風呂の用量が200リットルであることを考えると、どれだけ腎臓がたくさんの尿を作って水分を再吸収しているかがわかると思います。

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腎不全とはどういうこと?~BUN、Cre、尿比重の意味

腎臓から尿が作られる過程がわかると腎不全がどういうものなのかが理解できます。

腎不全だからといって腎臓自体が悪いとは限らない

腎不全は腎臓から排泄されるべき老廃物が排泄されないことなのですが、その要因として、腎前性腎不全・腎性腎不全・腎後性腎不全に分かれます。腎前性腎不全は脱水や低血圧、血栓などにより腎臓への血流が減ってしまう状態です。腎後性腎不全は、腎臓で尿を作っても体の外に出せない状態であり、尿道結石による閉塞や事故による尿管断裂、膀胱破裂などが原因になります。

慢性腎不全は再吸収能力の低下から

一方で腎性腎不全は腎臓の機能そのものが落ちてしまうもので、糸球体の機能と尿細管の機能のどちらか、もしくは両方が落ちてしまう状態です。慢性腎不全はほとんどは腎性腎不全なのですが、尿細管の再吸収能力が落ちてくることから始まります。

CKDの初期では糸球体のろ過機能は維持できるけれど、水分の再吸収がうまく行かず、濃いおしっこにできない(=尿濃縮能の低下)、つまり、他飲多尿の状態になります。血液検査で腎臓の数値(BUN、Cre)が上がるより先に、尿比重の低下が起こって、CKDのステージ1と呼ばれる時期になります。尿比重や多飲多尿の症状が重要なのはそのためであり、慢性腎臓病の早期発見には尿比重の低下がカギになるのです。

糸球体の機能も落ちて来るとBUN、Creなどの腎臓の数値が上がってきますが、これが上がってくるのは糸球体の3/4が機能しなくなってきてからであると言われています。こうなるとCKDステージ2以上になってしまいますね。

ラプロスの使用も早期の方がいい?

今回販売される「ラプロス」は、猫のCKDステージ2~3に対する治療薬になります。ただし、私が調べた限りでは、ラプロスの成分であるベラプロストナトリウムはCKDステージ1~2の猫に効果があるというデータも出ています(猫の慢性腎不全に対するベラプロストナトリウムの効果についての検討)。

やはり犬や猫のCKDは、早期発見早期治療が重要だと考えます。そのためには、シニア期以降の犬・猫は、尿比重の低下のサインである多飲多尿に注意してくださいね!

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コメント

  1. より:

    はじめまして。
    腎臓病と診断された犬2匹とアメリカに住んでおります。
    犬3匹と猫3匹を飼っておりましたが、犬3匹と猫1匹が腎臓病と診断され、
    先月2匹目を亡くしたました。

    アメリカでは腎臓病の投薬治療は行われておらず、サイトで調べた所、
    クレメジン、コバルジンやネフガードが日本では使われると分かり、
    こちらの医師に伝えました。
    残念ながらクレメジンはアメリカでは認可されておらず、獣医師も
    知識がなく、私と一緒に調べている次第です。

    説明が長くなりましたが、ネットで調べている時にそちらのサイトを
    紹介され、失礼ながらご連絡させて頂いております。

    質問ですが、コバルジンは猫用の物しかネットで見つけることが出来ないのですが、犬に投薬しても良いのでしょうか?
    又、クレメジンは人間用、コバルジン動物用と理解しておりますが、
    正しいでしょうか?

    お忙しい中恐縮ですが、お返事をを頂くことが出来ましたら幸いです。

    • adiantumg より:

      島様

      返信大変遅くなり申し訳ありません。

      まず、獣医師法の兼ね合いもあるので、診察をしていない動物への投薬指示は行えないことはご了承ください。
      コバルジンとクレメジンの内容は同じです。違いは
      ・クレメジンはカプセル、コバルジンは顆粒
      ・クレメジンは200mg、コバルジンは400mg
      と形状と容量の違いだけになります。ですので、猫用として販売されていても犬にも使うことは多く、クレメジンと同じように使っている動物病院が多いと思います。
      ご参考までに。