腎不全シリーズ③ 多飲多尿で動物病院を受診したときにする検査

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前回の記事で、慢性腎不全(慢性腎臓病=CKD)の早期発見早期治療のために必要な、初期症状「多飲多尿」に早く気付くためのポイントをお話いたしました。今回は、多飲多尿に気付いて病院に行った場合に、どんな検査を行うのか、その意味と一緒にお話ししましょう。

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1. 問診・身体検査

動物病院での診察は、問診と身体検査から始まります。ここでは、ペットの年齢・性別・同居動物の有無などの基本情報、他の症状の有無、症状の経過などの聞き取りと、体重・体温測定、触診、聴診などの身体検査から疑わしい病気を考えて、次に必要な検査が何なのかを考えます。

時々、問診だけでいきなり検査をする動物病院もあるようですが、体も触らず検査だけする動物病院は私はお勧めできません。また、問診をほとんど聞かない動物病院もあまりよくないでしょう。体の状態すべてを検査だけで把握することは不可能です。問診と身体検査は非常に重要な情報を与えてくれる診察になくてはならない過程の一つですので、頻繁に通っていて必要なさそうという場合を除いて、問診と身体検査をほとんどしない動物病院はあまりお勧めできません。

2. 血液検査

多飲多尿がある場合に、もっとも重要な検査の一つが血液検査です。血液検査は腎不全以外の他の多飲多尿の病気の鑑別のために絶対に必要な検査です。

血液検査で鑑別診断できる多飲多尿を起こす病気

一般的な血液検査で鑑別できる病気には以下のような病気があります。
・糖尿病(血糖値の顕著な上昇)
・高カルシウム血症(カルシウムの増加)

血液検査で疑うことのできる多飲多尿を起こす病気

また、一般的な血液検査で疑わしいかどうかわかる病気は以下のようなものがあります。
・子宮蓄膿症(白血球の上昇、CRPの上昇)
・副腎皮質機能亢進症(ALPの上昇)
・副腎皮質機能低下症(軽度の貧血、BUNの上昇、Naの低下、カリウムの増加)
・甲状腺機能亢進症(肝酵素の上昇、腎臓の数値の上昇、多血症)
・肝不全(アルブミンの低下、コレステロールの低下など)

これらの病気が疑われる場合、子宮蓄膿症では超音波検査、その他は特殊な血液検査を行います。

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3. 尿検査

多飲多尿の症状がある動物では、血液検査と並んで尿検査も非常に重要性の高い検査です。

4つの採尿方法

尿検査のための方法は、以下の4つがあります。
自然排尿:家でした尿を病院に持っていくor病院でした尿(犬なら駐車場などでさせる)
圧迫排尿:獣医師が膀胱を圧迫して尿を出す(猫でやることが多い)
カテーテル採尿:カテーテルを尿道に通して採尿する(メスでは難しい)
膀胱穿刺:超音波で膀胱を確認しながらお腹から針を刺して採尿(暴れる動物では危険性あり)

それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、検査の目的と動物の性別や性格などによって一番適切な方法を選択して尿検査を行っていきます。

尿検査の目的

尿検査によって動物の体の様々な情報がわかります。慢性腎不全で尿検査をする意味は、主に以下の4つになります。

① 他の病気の鑑別
糖尿病などの病気がないかどうかを調べる

② 尿比重のチェック

慢性腎不全では尿比重が下がります。尿比重は水分をたくさん取っていると下がるので、尿比重が低い=腎不全ではありませんが、尿比重が高ければ慢性腎不全の可能性は低いでしょう。

③ 腎臓の障害のチェック
尿検査では、細菌・白血球・尿円柱などのチェックも行います。これらの有無は腎臓や膀胱の炎症の有無を意味しますので、腎盂腎炎や糸球体腎炎などがないかどうかの鑑別になります。これらの病気があれば、急性腎不全を起こしている危険性がありますし、使う治療薬が変わってきます。

④ たんぱく尿のチェック
腎不全では尿たんぱくが増えることが多いです。尿たんぱくの存在や濃度によって、使う薬の種類を考えたり、予後の参考にすることもできます。

4. 超音波検査とレントゲン検査

超音波検査やレントゲン検査など、必要があれば他の病気の鑑別のために行うことがあります。また、血液検査や尿検査で慢性腎不全と診断した場合にも、慢性腎不全の原因が腎臓の腫瘍や腎嚢胞、尿管結石であることもあるので、これらの病気が疑わしい場合にも、超音波検査やレントゲン検査を行うことがあります。

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まとめ

慢性腎不全の検査は、主に血液検査と尿検査で行うことが多いです。血液検査だけは初期の腎臓病(=CKDステージ1)を見逃してしまいますし、尿検査だけでは副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの尿比重を低下させる病気との鑑別が付きません。

また、他の病気の可能性や慢性腎不全の原因となる病気の可能性(心不全や甲状腺機能亢進症では慢性腎不全が併発しやすいです)を探る意味で問診や身体検査は重要ですし、場合によっては超音波検査やレントゲン検査も必要になるかもしれません。

獣医任せにしないで、飼い主さんが検査の理由と結果を理解しておこう

飼い主さんに知っておいてほしいのは、
・どの検査をどんな理由でするのか
・検査結果からどのようなことが考えられるのかということです。
夜間の救急動物病院で診察をしていると、せっかく検査をしたのにその結果を全く理解できていない飼い主さんも多いようです。もちろん、獣医師にも説明して理解してもらう(インフォームドコンセントといいます)責任はありますが、飼い主さんもできるだけ理解するように努力しておきましょう。

特に慢性腎不全は、完治する病気ではありませんが、うまくコントロールできれば1年以上元気に生活できる子も珍しくありません。「ラプロス」などの慢性腎不全治療薬の登場によって、選択できる薬の種類は増え、さらに寿命が延びる可能性も高いです。より良い治療をするためには、飼い主さんが検査の意味と結果を理解する必要性はますます高まることが予想されるので、少しでも理解できるようにかかりつけの獣医師とよく相談しておきましょう!

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