腎不全シリーズ⑤ 犬と猫の慢性腎不全に使う治療薬の解説

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前回までの記事で、腎臓の機能多飲多尿の症状、動物病院で行う検査の意味食餌療法の重要性などをご説明しましたが、今回は治療薬に関して解説します。腎不全の治療の柱は食餌療法であると私は考えていますが、それだけでは不十分な場合には治療薬の併用も非常に重要です。薬にはいくつか種類があり、その子の状態にあった薬が必要になります。新薬「ラプロス」の適応に関しても一緒に触れておきますので、参考にしてみてくださいね!

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活性炭(尿毒症物質吸着剤):クレメジン・コバルジン・ネフガード

活性炭は、腸管内で尿毒症物質を吸着することがわかっています。クレメジンとコバルジンは石油系炭化水素、ネフガードは植物系炭化水素という違いはありますが、目的は同じです。クレアチニンやインドールなどを吸着して、腎不全時の尿毒症を予防します。

これらの物質を血液に吸収する前に、腸管内で活性炭に吸収させることで、体に吸収する尿毒症物質を減らす作用があります。

適応:CKDステージ2以降の犬および猫

活性炭の作用機序からは、腎臓の数値が上がってくるCKDステージ2以降が適応になると考えられます。CKDステージングに関してはこちらの記事を参考にして下さい。

リン吸着剤:レンジアレン

腎不全時にはリンの排泄能力が落ちるため、血中のリンの濃度が上がり、カルシウム濃度が下がって、ホルモンのアンバランスを起こしてしまうことがわかっています。腎不全療法食はリンの制限をしていますが、それでも血液中のリンが上がってきてしまう犬や猫にはレンジアレンが必要になります。

適応:高リン血症の犬および猫

同じ腎不全でもリンが上がりやすい場合とそうでない場合もあります。血液検査でリンが上がる傾向にある場合にレンジアレンは適応になります。

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カリウム製剤

慢性腎不全時には、尿量の増加と共にカリウムの排泄量が増えて、低カリウム血症を起こすことがあります。特に食欲が落ちると、食餌から採るカリウムが減るため、カリウム濃度は下がりやすくなります。一般的にネコはカリウムが下がりやすい傾向にありますが、犬では逆に上がりやすくなる(カリウムの排泄能力の低下)傾向にあります。

カリウムの低下は、腸管の運動を抑えてしまうため、さらに食欲不振を引き起こしてしまいます。低カリウムの動物では、首を少し下に向けて動きが悪くなることが多いため、そういった体勢を取っているという場合は、低カリウムの可能性が怪しいです。

適応:低カリウムの猫(時に犬)

カリウム濃度も、上がるか下がるかは動物によって変わります。カリウムが上がる場合には、カリウムを含まない点滴やカリウム吸着剤を使うこともあります。カリウム濃度が正常になると、元気や食欲が一気に上がることが多く、低カリウムの動物にはカリウムの補給は非常に重要です。血液検査では腎臓の数値だけでなく、電解質のチェックも必ずしてもらいましょう。

ACE阻害薬・ARB:エースワーカー、フォルテコール、セミントラなど

ACE阻害薬とARB(アンギオテンシン受容体阻害薬)はどちらも、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系と言われる、血圧調節のホルモンを抑える作用によって、高血圧を改善します。慢性腎不全では、血圧が上昇することが多いですが、高血圧は腎不全の悪化要因の一つです。全身的な高血圧だけではなく、「糸球体高血圧」と言われる腎臓内の高血圧も腎不全の悪化要因です。

ACE阻害薬やARBの作用に関してはこちらの記事も参考にしてみてください。

適応:高血圧あるいは蛋白尿の脱水がない犬および猫

糸球体高血圧になると蛋白尿が起きやすいので、蛋白尿もACE阻害薬やARBの適応になります。緊張する犬や猫の場合は、動物病院での血圧測定では血圧が高くなる傾向にありますが、それほど降圧効果は高くないので脱水さえなければ比較的安全に使えます。

ベラプロストナトリウム:ラプロス

今回新しく販売される「ラプロス」はACE阻害薬やARBと同じような使い方になりますが、ACE阻害薬やARBにはない腎臓保護作用も期待されています。高血圧の改善だけでなく、消炎作用や抗線維化作用など腎臓の変性を防ぐ効果や血小板凝集抑制作用によるGFR(糸球体ろ過量)の維持効果などもラプロスに期待される効果です。

ラプロスの効果に関してはこちらの記事を参考にしてみてください。

適応:CKDステージ2~3

ラプロスの適応はCKDステージ2~3になっています。ただし、ベラプロストナトリウムの研究ではステージ1から使ってもい結果が認めらるという報告もあるため、ステージ1から使用することで慢性腎不全の悪化を防ぐことができるかもしれません。

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点滴

腎不全では、尿の濃縮能の低下から脱水することが多く、脱水の改善のために点滴が必要になることが多いです。また、尿毒症物質が溜まってしまった場合も、それらの物質を尿中に排泄させるために点滴が必要になります。点滴にはいくつか種類がありますが、動物の体の状態(ナトリウム、カリウム濃度、pHなど)によって使い分けます。

適応:脱水している犬および猫、尿毒症が疑われる犬および猫

脱水や尿毒症を起こしている動物の状態を最も素早く改善するためには点滴が一番です。ただし、慢性腎不全でも脱水がなく、元気食欲が落ちている動物には点滴は必ずしも必要ありません。食事や薬による治療の方が優先順位が高いことも多いです。

まとめ

慢性腎不全の治療は、その動物の状態にあった治療方法や薬を選ぶことが大切です。そのためには、定期的な通院や検査が必要になることも多いです。他の病気に比べ、長い付き合いになる慢性腎不全は飼い主さんの治療への協力が不可欠になるため、しっかり治療法を理解しておきましょう。今後、新薬ラプロスがどの程度効果があるのかにも注目しておいてくださいね!

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コメント

  1. 白石 より:

    16歳10ヶ月Mダックスフンドですが投薬タイミングで混乱しています。
    今年1月に腎不全と診断されてクレメジン、レンジアレン、カリナール2を食事時に与えています。また、これらとは1時間以上離してヘム鉄も与えています。HCTは6月のエリスロポエチンの1ヶ月週3連続使用で正常値内になり、NA.K.CLはまだ正常値内です。7月からは点滴は週2です。
    先日血液検査でBUN56は変わらないものの、CREAが1ヶ月半前2.0から2.7に上昇し、新たにフォルテコールが渡されました。
    食事時にクレメジン、レンジアレン、カリナール2、食間にヘム鉄、ヘム鉄3回のうちの1回にフォルテコールと説明されました。
    ところが今日、上記の病院ではなく(休診日の急な場合を考え2つの病院に行っています。どちらにも話してあり快諾済みですが)もう1つの病院に、そうではなく食事時にカリナール2、レンジアレン、ヘム鉄、食間にクレメジン、別の食間にフォルテコールと言われました。
    聞き直しても、どちらの医師も詳しく説明の上主張されるので、???となり困っています。
    長文ですみませんでしたが教えて頂きたいです。

    • adiantumg より:

      白石様

      返信遅くなり申し訳ありません。
      基本的に主治医でない私が投薬に関してコメントするのは避けたいのですが、一般的なお話をさせていただきます。
      1.クレメジンは尿毒症物質を吸着するお薬です。ただし、他の薬成分を吸着してしまう可能性があり、他のお薬とは30分~60分以上離して投薬することが望ましいお薬です。
      2.フォルテコールは食事と関係なく、いつ飲ませるという指定はありません。食前・食後・食間のどれでもいいでしょう。
      3.鉄剤は少し注意が必要のある薬です。他の薬と結合して他の薬の吸収を抑えてしまう可能性があります。どのお薬との併用というのをすべて把握しておらず申し訳ありませんが、できれば他の薬と1時間程度離して与えた方がいいと思います。

      ただし、これらの飲み方でどの程度薬の効果が変わるのかというデータはありません。
      薬の使用に関しては、犬には人体薬を使うことも多いため、何をどのようにという正確なデータが出ていないことも多いです。2人の先生の言うことが違うと混乱するとは思いますが、基本的には主治医の先生にもう一度聞いて使うようにしてください。やはり何かあった時に頼るのは主治医の先生になりますので。

      • 白石 より:

        ご丁寧にありがとうございました。
        それぞれの効能をよく把握出来ました。
        タイミングについては再度医師に確認してみます。

        • adiantumg より:

          白石様

          コメントありがとうございました。
          ワンちゃんの腎不全は比較的経過が早く、状態が一気に悪化してしまうことも珍しくありません。
          少しでも元気に長生きできるようお祈りしています。

  2. 高田初枝 より:

    こんにちは。ョ-キ-15歳7ヶ月が、昨年12月から腎臓闘病中なのですが、いよいよ尿素窒素が190にもなり、皮下点滴と薬治療をしています。療養食を食べなくなり、注射を打って頂きました。ご質問は、肉と野菜とかにする場合、たんぱく質として、体重1㎏あたり何g位あげるといいのでしょうか? あと皮下点滴と同時に抗生物質を打っているのですが、毎回必要なのでしょうか?

    • adiantumg より:

      高田様

      返信遅くなり申し訳ありません。
      まず、実際に診察をさせていただけていないため、こちらでのコメントはあくまで参考という形で聞いてください。

      AAFCO(アメリカ飼料検査官協会)が発表している成犬に必要なたんぱく質の量は14%以上とされています。つまり、100gの食事中に18gのタンパク質ということですね。VCAというアメリカの動物病院グループは14~20%と発表しています。
      https://vcahospitals.com/know-your-pet/nutrition-for-dogs-with-chronic-kidney-disease

      日本の腎不全フードとしては、ヒルズのk/dがたんぱく質を10%以上、ロイヤルカナンの腎臓サポートが約14%含んでいます。いろいろ考えるとやはり14~15%程度がいいのではないかと考えます。

      これらの数値はあくまでドライフードですので、水分をたくさん含む手作りフードの場合は少し計算が複雑になってきます。

      例えば4kgの高齢犬であれば277kcalが必要で、これは腎臓サポートドライなら約70gに値します。
      腎臓サポート70gにはたんぱく質が約10g入っていますので、たんぱく質を1日10gであれば、たんぱく質を制限した腎臓療法食と同じ量になります(体重によって必要カロリーは異なり、それに合わせて必要なたんぱく質も異なります)

      実際には栄養状態やタンパク吸着剤の投薬の有無、肉にはリンも多く含まれているのでリンの量への注意などいくつも考えることはあります。そのあたりはしっかり主治医の先生と相談された方がいいでしょう。解凍になったかどうかわかりませんが、私が答えられる範囲は異常になりますので、どうぞご理解のほどよろしくお願いいたします。